ゲストのインタビュー台本3話分をAIで作る。「言えないこと」を先に決める質問の作り方と、失敗した4つのこと

2026年11月8日·長谷川 桂介
ゲストを呼ぶ対談動画は、毎回ちがう人の話を聞くので、質問の準備が重くなります。うちはM&Aを経験した経営者に3話で話を聞く番組で、事前のヒアリングシートを渡すと、AIがゲストに合わせた3話分の台本を色分けしたドキュメントで作る形にしました。質問をどう「その人用」に変えるか、言えないことをどう扱うか、失敗したことまで書きます。
結論(3行で)
- ゲストのインタビュー台本は、事前のヒアリングシートをAIに渡し、ひな形の質問をゲストの経験に合わせて書き換えさせています。3話分が、話す人ごとに色分けされたドキュメントで届きます。
- いちばん大事にしているのは、収録の前に「言えること・ぼかすこと・言えないこと」を決めることです。言えない話は、幅や倍率で聞く質問に置き換えます。
- 2026年8月から10人分・30本を作りました。作業時間と費用は測っていないので、測ってから報告します。
「次のゲストの台本、また一から考えないと…」
ゲストを呼んで話を聞く動画やセミナーは、毎回ちがう人が相手です。同じ質問を使い回すと、どの回も同じような話になります。かといって、毎回その人の経歴を調べて質問を作るのは大変です。
うちも同じでした。YouTube「社長のM&Aチャンネル」では、会社を売った経験のある経営者をお招きして、1人に3話で話を聞いています。1人分で3本の台本が要ります。
そこで、ひな形の質問を、ゲストの経験に合わせてAIに書き換えさせる形にしました。この記事は、対談・インタビュー・お客様の声の取材など、「人に話を聞く仕事」がある社長に向けて書いています。
この記事で手に入るもの
- インタビュー台本づくりの、AIと人の分担
- 「よくある質問」を「その人だけの質問」に変えるやり方
- 言えない話が多い相手から、話を引き出す質問の置き換え方
- 失敗した4つのことと、そのまま使える頼み方の文面
うちの場合:シートを渡すと、3話分の台本が届く
番組は、司会のわたし、M&Aの仲介の専門家、ゲストの3人で話します。1話は20分くらいで、3話の流れは毎回同じです。
| 話 | 聞くこと |
|---|---|
| 1話目 | なぜ会社を売ろうと思ったのか(きっかけ・迷い・決め手) |
| 2話目 | どう進んだのか(相談先・交渉・会社の中身の調べ) |
| 3話目 | 売ったあと、どうだったか(よかったこと・後悔・これから) |
台本ができるまでの流れはこうです。
- シートを送る収録の1週間前までに、ゲストに書いてもらう
- AIに渡すシートと公開されている経歴を渡す
- 質問を書き換えるひな形の質問を、その人の話に置き換える
- 色分けで届く話す人ごとに色を変えたドキュメントになる
- 人が直して収録わたしが読んで直してから撮る
運営者の会社の仕組み。2026年8月から使っている
あいさつや締めの言葉のように毎回同じ部分は、AIに書かせずに固定しています。AIが書くのは、毎回変わる質問の部分だけです。考え方はYouTubeの台本の記事と同じです。
たとえるなら、AIは取材の前に下調べをして、質問のメモを作ってくれる助手です。質問するのも、その場で話を広げるのも人です。
質問を「その人用」に書き換える
この仕組みの本体はここです。ひな形には「一番苦しかった時期はいつですか?」のような、誰にでも聞ける質問が並んでいます。これをそのまま聞くと、答えもぼんやりします。
そこでAIには、ゲストの固有の出来事や数字に置き換えるように頼んでいます。下の例は、説明のために作った架空の例です。
ひな形のまま
- 一番苦しかった時期は?誰にでも聞ける
- 売ろうと思ったきっかけは?答えが抽象的になりやすい
書き換えたあと
- 主な取引先が撤退した年、何が起きていた?その人の出来事から聞く
- その日、どこで誰と話していた?場面に引き戻す
説明用の架空の例。実際のゲストの話ではない
あわせて、AIには次の決まりを渡しています。
- 合わない質問は削る。ひな形を全部埋めることが目的ではない
- 見出しごと変えてよい。変えたら「元の見出しを置き換えた」と1行書く
- 各話の始まりは、そのゲストでいちばん強い数字か一言にする。生い立ちから順に話さない
- 各話の終わりに、次の話の予告を1つ入れる
- 1話目で売った金額を言わせない。2話目の山場を先に使い切らない
- ゲストが言っていないことは書かない。推測には「要確認」と書く
「言えないこと」を先に決める
M&Aの話は、契約で口外できないことが多くあります。収録の本番で「それは言えないんです」が続くと、話が止まってしまいます。
そこで、ヒアリングシートのいちばん上に、言える・ぼかす・言えないを項目ごとに書いてもらう表を置きました。
| 項目の例 | 書いてもらうこと |
|---|---|
| 会社名・業種 | 言える/ぼかす/言えない |
| 売った金額 | 「◯億円台」ならよい、など |
| 買い手の会社名 | 言えないなら、業種や規模だけはどうか |
| 売上・社員数 | どこまで出せるか |
| 顔出し | 顔を出す/声だけ/仮名 |
AIは、言えない項目に触れる質問を消さずに、幅・特徴・倍率で聞く質問に置き換えます。たとえば金額が言えないなら「利益の何年分くらいでしたか?」、買い手の名前が言えないなら「同じ業界の会社でしたか?」のように聞きます。
AIに任せる
- 質問の書き換えゲストの話に合わせる
- 言えない話の置き換え幅・特徴・倍率で聞く
- 時間の目安見出しごとに何分かを書く
- 色分け話す人ごとに色を変える
人がやる
- シートを書いてもらう言えることを先に決める
- 読んで直す失礼な聞き方がないか見る
- 本番で広げる台本にない話を拾う
運営者の会社の分担
台本の見た目:読むところと、読まないところを分けた
台本は、話す人ごとに文字の色を変えています。質問はすべて司会のわたしの色です。
この仕組みで足したのが、灰色の進行メモです。答えが短かったときの聞き直し、時間の目安、言えない話になったときのかわし方を、質問のすぐ下に灰色で書きます。収録中は灰色を読み飛ばせばよいので、どこを読めばよいかが一目で分かります。
結果:10人分・30本
2026年8月に作り始めてから、ゲスト10人分、30本の台本をこの形で作りました。台本は1話あたり14〜18問を目安にしています。
一方で、1人分を作るのに何分かかったか、AIの費用がいくらだったかは測っていません。 人が作っていたころと比べた時間も、測っていないのでここには書きません。測ったら報告します。
うまくいかなかった4つのこと
- ドキュメントにしたら、色が消えた:最初は、AIが書いた文章をそのままGoogleドキュメントに変換しました。ところが、話す人ごとの色分けが再現できませんでした。いまは1行ずつ色を付けて書き込む専用の仕組みで作っています
- 1週間ごとに、Googleへのログインが切れた:Googleの設定が「試している途中」のままだったので、7日ごとに入り直しが必要でした。設定を本番の状態に切り替えて直しました
- 台本の通し番号が重なった:別の2人の台本に、同じ番号を付けてしまいました。どちらを付け直すか確かめている途中です。ドキュメントの名前だけを付け替える仕組みにしたので、共有したリンクは変わりません
- 公開されている経歴だけでは足りなかった:ゲストによっては、経歴がほとんど公開されていませんでした。AIに想像で埋めさせず、台本に「要確認」と書いて、収録前のヒアリングで確かめる形にしています
- 言えないことを先に決める本番で話が止まらないように
- 言っていないことは書かせない推測には「要確認」と書く
- 合わない質問は削るひな形を埋めるのが目的ではない
- 読むところと読まないところを分ける進行メモは灰色にする
- 人が読んでから撮る失礼な聞き方がないか見る
運営者の会社の決まり
まずはこれだけ:3ステップ
仕組みを作らなくても、ふだんのAIとの会話で試せます。
- 聞きたい流れを3つに分ける:きっかけ・進め方・振り返りのように、話の順番だけ決める
- 相手の情報を集める:会社のホームページや、本人に書いてもらったメモを用意する
- 下の文面でAIに頼む:出てきた質問を、自分の言葉に直す
頼み方の文面
そのまま貼って使えます。
これからインタビューの相手の情報を渡します。
次の流れで、20分のインタビューの質問を15問ほど作ってください。
流れ:①きっかけ ②どう進めたか ③振り返り
「一番大変だったことは?」のような誰にでも聞ける質問は、相手の出来事や数字を入れた質問に書き換えてください。
渡した情報に無いことは書かず、分からないところは「要確認」と書いてください。
相手が「言えない」と言っている項目は次のとおりです。
(ここに書く)
この項目に触れる質問は消さずに、幅・特徴・倍率で聞く質問に置き換えてください。
それぞれの質問の下に、答えが短かったときの聞き直しを1つずつ書いてください。
気をつけること
いちばん大事なのは、相手の話を作らないことです。AIは、それらしい経歴や出来事を書いてしまうことがあります。台本に書いた事実は、本人に確かめてから使ってください。
ほかの会社や人の話が出そうな回は、相手の名誉を傷つける言い方になっていないかも、人が読んで確かめます。お金の話は「何をしたか」を聞くだけにとどめ、投資の勧めになる聞き方はしません。
M&Aの進め方や、仲介会社との契約で気をつけることは、中小企業庁の「中小M&Aガイドライン」に、無料でまとまっています。2024年8月に第3版が出ています(確認日:2026年11月8日、出典:中小企業庁「中小M&Aガイドライン」、経済産業省「中小M&Aガイドライン」を改訂しました)。最新の版は、中小企業庁のページで確かめてください。
もっと詳しく知りたい方へ
使っている道具
仕組みは、パソコンで作業をさせる道具のClaude Codeに頼んで作りました。「M&Aインタビューの原稿を作って」と頼むと、手順書を読んで台本を書き、色分けしたGoogleドキュメントにするところまで進みます。
ひな形は直接書き換えない
3話のひな形は、毎回使う土台です。ゲストごとの台本はひな形の写しに書きます。番組の構成そのものを変えたいときだけ、ひな形を直します。そうすると、次のゲストから全部に効きます。
まだ終わっていないこと
- 1人分の作業時間と費用を測る
- 重なった通し番号を付け直す
- 収録後に直した台本を残して、次の台本づくりに効かせる
よくある質問
Q. 相手にヒアリングシートを書いてもらうのは失礼になりませんか? A. うちは、全部ではなく「言えること」と経歴の要点だけは必ず書いてもらっています。本番で「言えない」が続くほうが、相手にも負担になるからです。
Q. 社員やお客様へのインタビューにも使えますか? A. 流れを3つに分けて、相手の情報から質問を作る考え方は同じです。うちで仕組みとして動かしているのはM&Aの番組だけで、ほかの取材には試していません。
Q. 台本どおりに聞けばよいですか? A. いいえ。台本は準備のためのメモです。うちも本番では、台本にない話を拾って広げています。
まとめ
- ゲストの台本は、ひな形の質問をAIにゲストの経験に合わせて書き換えさせる。合わない質問は削る
- 収録の前に「言える・ぼかす・言えない」を決め、言えない話は幅・特徴・倍率で聞く
- 10人分・30本を作った。時間と費用は測っていないので、測ってから報告する
今日、まずは次に話を聞く相手を1人選び、上の文面で「この人に合わせた質問を作って」とAIに頼んでみてください。ひな形との違いを見るだけで、どこを「その人用」に変えればよいかが分かります。
会社全体でAIを使い始める順番はAI導入の進め方に、AIに頼む仕事の型はClaude Code活用術にまとめています。
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朝起きたら、AI社員から報告が届いている会社へ
Claude Code・Slack・Obsidian・Mac miniなど14の道具の目的と費用、30日でつくる手順、そのまま使える業務レシピ12本。社員7人の会社の運営者がいま使っている構成を、無料のPDF(58ページ)でお送りします。
無料で「AIエージェント環境 完全ガイド」を受け取る社長の実践ログの記事
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