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中小企業のAI導入の進め方|費用の目安と最初の90日を、社員7人の会社の実例で全部公開

最終更新 ·長谷川 桂介

中小企業がAIを入れるときの順番は「情報をAIが読める場所に置く → 社長が毎日使う → 社員の定型業務を渡す」の3段階です。社員7人の会社が実際に立てた計画と日程、公式ページで確かめたツールの月額、つまずきやすい点とその避け方を1ページにまとめました。

この記事で分かること

  • 中小企業がAIを入れるときに、何から順に手をつければいいか
  • 最初の90日で、週・月ごとにやること(社員7人の会社の実際の日程つき)
  • AIツールと、その土台になる道具の月額(各社の公式ページで確かめた価格)
  • よくある失敗と、その避け方
  • うちの会社ならどこから始めるかを決めるためのチェックリスト

このページは、社員7人の会社の社長である運営者が、自社をAI前提の会社に変えている途中で書いています。2026年10月に100日でAI前提の会社にする計画を始めました。まだ途中なので、結果が出ていないところは「計画」と書いています。うまくいったこと・いかなかったことが分かるたびに、このページも書き足していきます。

まず知っておきたい数字

「AIを使っている会社」は、数え方で20%にも86%にもなる

同じ「導入率」でも、何を数えたかで数字が大きく変わります。

何を数えたか 割合 出典
社内の誰かが何らかの業務で生成AIを使っている 86.4% 総務省「令和8年版 情報通信白書」
会社として業務で「活用している」(中小企業) 32.4% 帝国データバンク(2026年3月調査)
会社として・部門で活用を進めている(中小企業) 32.3% 東京商工リサーチ(2026年4月公表)
お金を払って導入している(従業員30〜99人の会社) 16% 厚生労働省「労働経済動向調査」
AIを全社または一部の業務で導入している(中小企業) 20.4% 中小企業基盤整備機構(2026年3月公表)

「みんな使っている」は、社員が個人で使っている分まで数えた数字です。会社として仕組みに組み込めている中小企業は2〜3割。いま始めれば、中小企業の中では早いほうに入ります。それぞれの調査の詳しい中身は企業のAI導入率まとめに並べています。

小さい会社ほど「大いに効果が出ている」

生成AIを業務で活用している企業の86.7%が「効果が出ている」と答えています。「大いに効果が出ている」は、小規模企業(29.7%)のほうが大企業(20.8%)より多くなっていました。

出典:帝国データバンク「生成AIに関する企業の動向調査(2026年3月)」(2026年5月14日公表)

効果の中身は、ほとんどが作業時間の短縮です。生成AIを使った作業では、所要時間が平均16.7%短くなっていました。ただし、浮いた時間の61.2%は別の仕事に使われていて、労働時間そのものが減った人は約4分の1です(効果の数字まとめ)。浮いた時間で何をするかを先に決めておくと、効果が手元に残ります。

AIの値段は下がり続けている

同じ性能のAIを使う費用は、2022年11月から2024年10月までの約2年で280分の1以下になりました(Stanford HAI「AI Index Report 2025」)。「高いから様子見」の理由は、年ごとに小さくなっています。詳しくはAIの市場と値段の下がり方にまとめています。

進める順番は3段階

うちの会社では、100日を3つに分けました。この順番が、中小企業がAIを入れるときの基本の形だと考えています。

段階 やること ゴール
1. 土台づくり メール・書類・お客様の情報を、AIが読める場所にまとめる AIに「調べて」「まとめて」と頼める状態にする
2. 社長が毎日使う まず社長が毎日AIに仕事を頼み、使い方の型を作る 社内に「こう頼めばいい」という実例ができる
3. 社員に渡す 社員の定型業務をAIに任せる 社員がお客様と話す仕事に時間を使える

1. 土台:情報をAIが読める場所に置く

AIに「先月のお客様とのやり取りをまとめて」と頼んでも、メールが社員のパソコンの中にしか無ければ、AIは読めません。うちの会社は、メールは各自のパソコン、ファイルは事務所の社内サーバー、手順書は決まった置き場所なし、という状態でした。どれも困ってはいませんでしたが、AIから見るとほとんどが「読めない場所」です。

そこで、道具を次のように入れ替える計画を立てました(移行計画の全体)。

今 これから 切り替え
パソコンのメールソフト Gmail(Google Workspace) 2026年11月中旬
社内サーバー Googleの共有ドライブ 並行して使い、2027年の年度末に停止
スケジュール管理ツール Googleカレンダー 2026年12月
チャットツール Slack 社内は2027年1月
決まった置き場所なし Notion(手順書・議事録) 順次

ここでやること

  • 替える順番は「AIが読めたときに一番効くもの」から。うちはメールとファイルが最初です
  • 移す前にファイルの量を測る。うちは約45GB・約6.9万ファイルで、同じファイルが2つずつ入っていました。移すのは最新の分(約32GB)だけにします(Google Workspaceへの移行計画)
  • 社長個人のアカウントで使っている会社の資産を、会社のアカウントに移す

つまずきやすいところ

  • 一度に全部替えると、社員が混乱します。切り替えの日を月ごとにずらし、古い道具もしばらく両方使えるようにしておきます
  • メールの行き先を変えるとき、同じドメインのホームページの設定を触らない。作業の前に設定を控えておきます
  • 道具の入れ替えそのものは半年ほどかかります。100日の中で全部終わらせようとしなくて構いません

2. 社長が毎日使う

いきなり社員に「AIを使って」と渡しても、まず使われません。社長が毎日使って、使い方の型ができてから渡す。そのための期間を、あえて真ん中に置いています。

運営者が自分のために作って毎日使っている仕組みの例です。

どれも、運営者はプログラムを書いていません。AIに「何を、どのくらいの短さで返してほしいか」を言葉で渡して作ってもらっています。NVIDIAのジェンスン・フアン氏も、まず社長自身が日常の業務で触ってみることを勧めています(フアン氏の発言録)。

ここでやること

  • ChatGPTかClaudeに登録して、同じ頼みごとを両方にしてみる。比べるのに10分もかかりません(ChatGPTとClaudeの選び方)
  • 「毎日・同じ手順・数分」の作業を1つ選び、AIに任せる
  • 頼み方の文面を保存しておく。これが、社員に渡すときの「型」になります

つまずきやすいところ

  • 「便利にして」と頼むと、AIは情報を盛り込みすぎます。返してほしい中身と長さを先に決めて渡します
  • お客様の個人情報、社員の給与や評価は、最初は入れないと決めておきます

3. 社員の定型業務を渡す

うちで一番手間がかかっているのは、社員が毎日回している管理業務です。お客様からの申込書を処理し、取引先へ書類を送り、進み具合を追いかける。ここをAIに任せる計画です。

ここでやること

  • AIを、社員がいつも使っているチャットの中で使えるようにする。「この申込書の内容を一覧に入れて」とチャットで頼めば入力される、という形を目指しています(社内チャットをSlackに替える計画)
  • 仕事の手順を書き残す。人に教えるための手順書は、そのままAIに仕事を渡すための指示書になります(手順書をNotionに集める計画)

つまずきやすいところ

  • AIのために新しい画面を開かせると、使われなくなります。新しい道具が苦手な社員でも、チャットで話しかけるだけなら使えます
  • 手順書は白紙から書かせない。社員が仕事をしながら短くメモし、AIが下書きを作り、社員が違うところだけ直す、という順にします

この段階の結果は、100日実録で報告していきます。

最初の90日でやること

うちの会社の実際の日程と、そこから見えた「この時期にやること」を並べます。DAY0は2026年10月7日です。

1週目:始める前の状態を測り、決めごとをする

  • いまの管理業務にどれだけ時間がかかっているかを測る。始めたあとに同じ測り方で比べるためです。うちは100日後に同じ測り方で比べて公開します
  • 会社のデータは会社の名義にすると決める。AIの仕組みを置く場所、メールやファイルの管理者、ドメインを自社の名義にしておけば、組む相手を替えるときもデータを持って移れます
  • 社長自身がChatGPTかClaudeを使い始める

1か月目(DAY1〜30):土台の段取りを決める

  • 道具ごとに、何を何に替えるか、いつ切り替えるかを決める
  • ファイルの量と中身を測る。AIに「このフォルダの中身を種類別に数えて」と頼めば済みます
  • 予定表の過去1年分をAIに読ませて、時間のかかっている仕事を探す。うちは引き継ぎのための予定だけで約420時間ありました
  • 社長個人のアカウントにある会社の資産(Googleドライブのファイル、YouTubeチャンネルなど)を洗い出す

うちは、ここまでの計画を、DAY1(10月8日)に移行計画の記事としてまとめました。

2か月目(DAY31〜60):社長が毎日使う

  • 一番効く道具から切り替える。うちはメールを11月中旬、予定を12月に切り替える予定です
  • 社長が毎日AIに仕事を頼み、うまくいった頼み方を残す
  • 社員にはメモを取ってもらい始める(手順書の材料になります)

3か月目(DAY61〜90):社員に渡す準備

  • 社長が作った頼み方の型を、社員の定型業務に当てはめる
  • 社員のメモから、AIに手順書の下書きを作らせる
  • 社内チャットの切り替えを決める。うちは社内を2027年1月、社外の方とは移れる相手から順に、としました
期間 うちの実際の日程
DAY0(2026年10月7日) 100日の計画を公開
DAY1(10月8日) 道具の入れ替え計画をまとめる
2か月目(11月中旬) メールをGmailへ切り替え(予定)
2か月目(12月) 予定をGoogleカレンダーへ切り替え(予定)
4か月目(2027年1月) 社内チャットをSlackへ切り替え(予定)
2027年の年度末 社内サーバーを停止(予定)

切り替えの日は、100日の3つの区切りとぴったりは重なりません。道具の都合と、社員が一度に覚えることを減らすことを優先しました。

費用の目安

AIと土台の道具の月額(2026年10月18日に公式ページで確認)

道具 プラン 表示されている価格 円にすると
Claude Pro(個人) 月20ドル(月払い)/月17ドル(年払い) 約3,160円/約2,690円
Claude Team(2〜150人) 1人月25ドル(月払い)/月20ドル(年払い) 約3,950円/約3,160円
ChatGPT Plus(個人) 月20ドル(月払い) 約3,160円
ChatGPT Business 1人月25ドル(月払い)/月20ドル(年払い) 約3,950円/約3,160円
Google Workspace Business Standard 1人月1,600円(税別) —
Slack プロ 1人月1,050円(月払い)/925円(年払い) —
Notion プラス 1人月1,650円 —
  • ドル建ての価格は、1ドル=158円で計算しています(2026年10月13日の日銀為替市況・午後5時の158円21〜22銭による。松井証券の掲載で確認)
  • ChatGPTもClaudeも無料版から始められます。ChatGPT Businessの価格は、国や通貨によって変わる場合があると書かれています
  • Google Workspace Business Standardには、GmailやGoogleドキュメントなどで使えるGeminiが含まれています。料金ページには「1年契約なら16%お得」とあり、契約の形で金額が変わります
  • Notionは「年間プランで最大20%お得」と表示されています。AIの機能(Notion Agentなど)が本格的に使えるのは、1人月3,150円のビジネスプランからです
  • Slackの料金ページには、税込か税別かの記載がありませんでした
  • どのページにも、期間限定の割引が出ていました。割引は時期で変わるので、上の表には入れていません

出典:Claude 料金/ChatGPT Plus(OpenAIヘルプ)/ChatGPT Business(OpenAIヘルプ)/Google Workspace 料金/Slack 料金/Notion 料金(いずれも2026年10月18日に確認)

うちの会社のGoogle Workspaceは、上の表示価格で計算すると月1万円ほど(税別)です。ここにAIの料金が加わります。社員全員にClaude TeamかChatGPT Businessを年払いで入れると、表示価格で月2万円ほどです。

自分で作った仕組みにかかる費用

運営者が作ったメルマガの仕組みは、1本あたり約90円です。大半はAIに事実確認をさせる部分の費用で、確認を省けば1本20円ほどで済みます(メルマガ自動化の記事)。

外注・支援を頼む場合

AI導入の支援やコンサルティングを外に頼んだときの相場は、公的な調査など出典を確かめられる数字が見つからなかったため、このページには書いていません(2026年10月18日時点)。支援会社が自社の記事で示している金額はありますが、それぞれの会社の価格です。

見積もりを比べるときは、同じ要件をまずAIで試作させてみて、見積もりと並べる方法があります(落合陽一氏の発言録の「社長が受け取れること」より)。

補助金

国の「デジタル化・AI導入補助金2026」(旧:IT導入補助金)では、通常枠の補助率は中小企業で2分の1、補助額は導入するツールのプロセス数に応じて5万〜450万円です。クラウドの利用料も最大2年分が対象になります。申請は、事務局に登録された「IT導入支援事業者」のサポートを受けて行う仕組みです。使いたいツールが対象になるか、いつ公募があるかは、事務局のサイトで確かめてください。

出典:中小企業庁「『デジタル化・AI導入補助金2026』の概要」(令和8年4月。2026年10月18日に確認)

よくある失敗と避け方

調査で多く挙がる「導入の壁」と、うちの実録で気をつけていることを並べます(数字は導入の壁まとめより)。

よくある失敗 避け方
「詳しい人がいないから」と始めない(推進しない理由の1位、55.1%) 最初の一歩に専門家は要りません。社長が無料版で頼みごとを1つ試すところから始められます
何に使えばいいか決められない(活用している会社の懸念で40.0%) 「毎日・同じ手順・数分」の作業を1つ選ぶ。うちは朝の予定確認から始めました
AIの答えをそのまま使う(懸念の1位は情報の正確性、50.4%) 出典を示させ、分からないことは「確認が必要」と書かせる。税務・法務など重い判断は専門家に確かめます
情報漏洩が心配で止まる(33.5%) 最初は「外に出て困る情報は入れない」と決める
いきなり社員に渡す 社長が毎日使い、頼み方の型ができてから渡す
道具を一度に全部替える 切り替えの日を月ごとにずらし、古い道具もしばらく残す
会社の資産が社長個人のアカウントにある この機会に会社のアカウントへ移す
AIに全部書かせる 毎回同じ部分は固定にして、AIには毎回変わる部分だけを書かせる
浮いた時間がどこかへ消える 浮いた時間で何をするかを先に決めておく

日本企業の27.0%は、生成AIで業務を変える「組織的な取組はない」と答えています(総務省「令和8年版 情報通信白書」)。社長が1つ事例を作るだけで、社内の動きは変わります。

どこから手をつけるか迷ったら

業務の洗い出し方

  1. 予定表をAIに読ませる。過去1年分の予定を書き出してAIに渡し、「時間のかかっている仕事を種類別に数えて」と頼みます。うちはこれで、引き継ぎに約420時間かかっていたことが分かりました
  2. 社員に1週間だけメモを取ってもらう。やったことを箇条書きで残すだけで構いません。手順書の材料にもなります
  3. 下のチェックリストに当てはめる。当てはまる数が多い仕事から、AIに渡していきます

AIに任せやすい仕事のチェックリスト

  • 毎日か毎週、同じ手順でやっている
  • 1回は数分〜数十分だが、回数が多い
  • 毎回同じ型の文書を作っている(報告、メルマガ、案内文など)
  • 材料がメール・書類・予定など、文字で残っている
  • 担当者が替わるたびに、横について教えている
  • 文章を読む・まとめる・書く仕事が中心
  • 間違えても、人が確かめれば直せる

先に確かめておくこと

  • メールとファイルは、AIが読める場所(クラウド)にあるか
  • 会社のアカウント・ドメイン・データは会社の名義か
  • 予定とタスクは1か所にまとまっているか
  • AIに入れない情報を決めたか

AIが得意な範囲の外にある課題では、AIを使った人のほうが成績が下がったという研究もあります(効果の数字まとめ)。まずは文章づくり・要約・定型の事務から試すのが確実です。中小企業こそAIで一気に追い越せる、という見方もあります(松尾豊氏の発言録)。

よくある質問

費用は、まず月いくらかかりますか?

無料版から始められます。有料にする場合、ChatGPTやClaudeの個人向けプランは月20ドル(1ドル=158円で約3,160円)です。会社で使う場合の目安は、このページの「費用の目安」の表を見てください。

パソコンが苦手な社員が多くても、できますか?

AIを、社員がいつも使っているチャットの中で使えるようにすれば、話しかけるだけで頼めます。うちもその形を目指しています。新しい画面を覚えてもらう必要がない形にするのがコツです。

ChatGPTとClaude、どちらを選べばいいですか?

どちらも無料で登録できるので、同じ頼みごとを両方にして、しっくりきたほうを使うのが一番早いです。長い資料を読ませるならClaude、画像づくりや音声で話しかけるならChatGPTから試すのがおすすめです(選び方の記事)。

お客様の情報を入れても大丈夫ですか?

最初は入れないと決めてしまうのが安全です。無料版では、入力した内容がAIの改良に使われる設定になっていることがあります。

社内に詳しい人がいなくても始められますか?

始められます。運営者もプログラムはほとんど書いたことがなく、AIに言葉で頼んで仕組みを作ってもらっています。仕組みづくりを外の専門家と組んで進める場合も、会社のデータは会社の名義にしておくと、相手を替えるときに困りません。

どれくらいの期間で効果が出ますか?

社長ひとりの作業なら、その日から軽くなります。会社全体では、うちは100日を1つの区切りにしています。メールやファイルの道具の入れ替えまで含めると、半年ほどかかる計画です。

補助金は使えますか?

国の「デジタル化・AI導入補助金」があり、クラウドの利用料も最大2年分が対象です。登録されたIT導入支援事業者を通して申請する仕組みなので、使いたいツールが対象かどうかは事務局のサイトで確かめてください。

社員の仕事がなくなりませんか?

うちが目指しているのは、管理業務をAIに任せて、社員がお客様と話す仕事に時間を使えるようにすることです。雇用への影響の調査はAIと仕事の数字にまとめています。

相談の案内

「うちの会社なら、どこからAIを入れるべきか」を、社員数や業種をうかがったうえでお伝えします。まだ何も決まっていなくて構いません。運営者が自社でやっている進め方をもとに、AI導入パートナーと一緒にご相談に乗ります。

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